公演にあたって  

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 『FLAMENCO 曽根崎心中』の原作である『曽根崎心中』は、実際に起こった事件をもとに作られた近松門左衛門の代表作です。1703年に初演されました。

 舞台は大阪の曽根崎。叔父の経営する醤油屋に勤める徳兵衛と、遊女・お初という、結婚を誓う恋人同士がいましたが、その恋は周囲からは認められません。
 そんな中、徳兵衛は親友と思っていた九平次に騙され、お初の身にも、身請け話が持ち上がります。
 追い詰められ、九平次の嘘で町の人々からの信頼も失った徳兵衛は、お初が働く「天満屋」にかくまわれますが、遊女であるお初は、自由に徳兵衛と結婚できる身分ではありません。九平次によって追われる身となってしまった徳兵衛に、お初は「どうせ生きて結ばれることがないのなら、天国で夫婦になろう、愛をまっとうして一緒に死のう」と迫ります。
 追い詰められた二人は死を決心し、店を抜け出し曽根崎の森へ。そしてあの世で夫婦になることを固く誓い合って、愛と名誉のために、心中を果たしたます。

 初演当時、心中、殺人、密通など実際に起こった事件をモデルにした作品が数多く作られましたが、『曽根崎心中』は、事件を見せものとして描くのではなく、主人公である、徳兵衛とお初の立ち場から、若者の純粋さゆえの悲劇を描いている点が他の作品とは異なっています。
 主人公たちは、破滅を避けることはできませんでしたが、それは人間として生きるための情熱的な行為であり、この世でなしとげられなかった思いを天国で果たすという、日本的な「救済」の思想が、時代を超えて聴衆に受け入れられている作品です。

FLAMENCO 曽根崎心中 清水公演実行委員会