民主主義・自由主義などと呼ばれるイデオロギーに基づく現代社会において、美術は宗教やイデオロギーから解放され自律的な存在となったが、同時に社会との関係も喪失してしまう。美術は社会性を帯びた時、爆発的な力を発揮し、それゆえ政治的に不幸な利用をされたこともある。社会と無縁の美術は、「芸術至上主義」の中で、「美術のための美術」に陥り「難しくてわけがわからない」ものとなり、別の一部は商業社会の中で「大衆的でつまらない」ものになってしまった。今日の美術は、「美術マニア」と「消費者」の嗜好を満たす存在として、社会的普遍性を失っている。
 こんな状況にあって、近年世界的レベルで美術作家やアートプロデューサーによる美術と社会の関係回復を意図した実験的試みが、にわかに活発化している。

 

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