ティンパニー「手締め式」と「ハンドル式」

 ティンパニは半球状の胴(ケトル)に皮を張った構造になっており、その皮を均一に張ることによって、はっきりした音程が作れる事が特徴である。
 この皮を張る方法が、ネジを使った手締め式ティンパニーが開発され、皮を均一に張る性能が一気に上がり、音程がしっかりしてオーケストラの中でもティンパニーが使われるようになったが、最初の内はトランペットとワン・セットで使われており、2台の楽器を主音(ハ長調なら「ハ=C=ド」)と主音から5度上の属音(ハ長調なら「ト=G=ソ」)の組み合わせで使用していた。
 そして、楽器のサイズの問題もあったのだろうが、通常は高いほうが主音、低い方が属音での仕様が殆どである。
 古典の楽譜では、ティンパニーの譜面は、主音と属音という書き方がしてある事があり、その場合は何の調でもドとソの2音で書かれている。当然、奏者は二長調ならレとラにチューニングする必要がある。

 この2つの音の組み合わせを崩すのは、ベートーヴェンで(違うかな? でも、研究論文じゃないからネ)、それ以降いろいろな使われ方がされてくるのだけれども、そうなると尚更スムーズに音程を変える必要が出て来た。
 そこで、前の項でも書いた様にメーカーが色々と試作した結果、生き残っているチューニングの仕組みの代表的なシステムが、昔ながらの「手締め式」と「ハンドル式」「ペダル式」の3つの方式である。
「手締め式」は、文字通り胴に取付けられた6〜8個のネジを手で回し、皮に張力を与える事で、音程を変える方法である。

   左の写真は私が所有しているヤマハの手締め式ティンパニーである。
 白い部分がヘッドで、通常の仕様である白いティンパニー様のプラスチック・ヘッドが装着されている。
 このヘッドの周辺を銀色の枠(リム)で押さえ、そのリムをネジで締めて、ヘッドの張力を変えて音程を変える。
 左の写真で解るように、ネジ受けは楽器本体に固定されている。構造がシンプルなので、故障もなく、取扱いは簡単だが、チューニングには技術が必要となる。
 特に演奏中に限られた時間の中で均一に定められた音程にチューニングするためには、耳の訓練をしておかなければかなり厳しいのだと思う。

 その一方、「ハンドル式」と「ペダル式」は、ネジで皮を均等に張る所までは同じだが、そのネジの受け部分をワイヤー等で引っ張ることで音程を変えてやる方法である。
 違いはワイヤーを調整する仕組みがヘッド横のハンドルなのが「ハンドル式」、足元のペダルなのが「ペダル式」である。

 右の写真は私が所有しているラディックのハンドル式、20インチのピッコロ・ティンパニーである。
 ネジ受けの部分かカム状になっており、その下からワイヤーが本体の内部に入っているのが解ると思う。
 このワイヤーが引っ張られる事で、カムが動き、リム全体を引っ張り、音程が変わる仕組みである。
 こうしたワイヤーでリムを引っ張る方式の楽器では、ヘッドは予め全体を均一に調整(チューニング)されているので、上の写 真の様に個々のネジにはハンドルが付いていない。
 余談だが、このハンドルには結構バチが引っ掛ったりする。指を引っ掛けて骨折した人もいるとか…
 
 

  楽器の胴の中に入ったワイヤーは一つに纏められ、下に引っ張ったり弛めたりされる訳だが、その制御を左の写 真にあるように手元に取付けられた大きなハンドルで行うのが「ハンドル式」のティンパニーである。
 この方式は「手締め式」と違い、操作するハンドルが一つなので、手締め式よりスムースに音変えが可能である。しかし、音を変える為には当然片手で作業しなければならないので、曲を演奏しながらのチューニングは出来ない。

 また、このハンドルは当然取り外しが可能である。
 手締め式程度のサイズのネジのハンドルにも引っ掛かるのだから、こんなサイズのモノがついていたら、かなり邪魔なのである。

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