おさけの話


 日本酒

 よく人から「何のお酒が一番好きですか?」と聞かれる。
 そうした時に私「何でも飲むけど日本酒が一番好きです」と答えている。
 この言葉に嘘はないのだけれど、じゃあ何が何でも日本酒かっていうと、そうではない。
 その場の雰囲気や、食事の内容などで何を飲むのかを決める事の方が多いのだ。
 要するにアルコールなら何でも好きなオジサンなのだが、人からまるでアル中の様に思われるのも少々困るので、そんな風に答える事になってしまう。

 で、日本酒についてだが、基本的には大好きである。
 でも、よく会合の後の懇親会等で宴会場で出される熱燗の日本酒は大嫌いである。今から二十数年前は結構好き嫌いなく飲んでいたのだが、美味い日本酒を飲めば飲む程、宴会場の日本酒が飲めなくなってきた。
 私は、普段は日本酒は常温で飲んでいる。
 これは日本酒を飲み始めた大学生時代からずっと同じである。
 大学生時代は、下宿で一升瓶からコップに日本酒を注ぎながら飲んでいた。実を言うと今でも自宅では一升瓶からグラスに注いで飲んでいる。
 大学生の頃は、燗をつけるなどという手間は面倒だったし、いちいちお銚子に注ぎ変えるなどという事は、考えもしなかった。
 今、私が自宅に買ってくる日本酒は、基本的には美味しい純米酒なので、燗をつける必要性は感じられないし、学生時代と違って焼き物の洒落たコップを使って飲んでいるので、お銚子も使わない。
 そもそも、我が家にお銚子があるのかどうか定かではない。
 四合ビンなどの大吟醸の純米酒等は、冷蔵庫に入れて保存してあり、ガラス製のお猪口でチビリチビリと飲むことも時々はある。
 どちらにしても、常時1〜2本の純米酒(酒屋で見て美味しそうなもの)が手元にあり、夕食時におかずをつまみながら飲む日本酒は最高である。


 シングルモルト

 シングルモルトに興味を持つようになったのは、四十歳を過ぎてからである。
 以前、一度知り合いから外国旅行の土産に「グレンフィディック」を頂戴して飲んだ事があったが、独特の臭さが気になって美味しいとは思えなかった。
 しかし、数年前「ボウモア」を口にしてみると、ピートの香りががキツイと感じはしたが、逆にそれが魅力に感じた。
 そして、マイケル・ジャクソン(歌手じゃないよ)氏の「モルトウィスキー・コンパニオン」を始めとした、シングルモルトのガイドブックを手にする様になった。
 幸い(不幸か…)にして、我が家の近所にはシングルモルトを百種類以上揃えた酒屋があったのも、シングルモルトに突き進む大きな要因であった。
 日本酒と同じで、私は酒をコレクションする趣味は無いので、常時4〜5種類のシングルモルトを傍らに、気分によって飲んでいる。
 シングルモルトを飲むのには国際規格のテイスティング・グラスを使うが進められるが、私は普段はピューター(錫と銅の合金)のストレートグラスを使っている。
 殆どの場合はストレートで飲むのだが、時々は少量の水を加える事もある。この時は小さめのワイングラスを使う。

 今までに私が飲んだシングルモルトの種類はそれ程沢山あるわけではない。気に入った銘柄は飲み終ったらまた同じモノを買ってくるからである。という訳で、現在の私のお気に入りの銘柄は「アードベッグ」と「ダルモア」、そしてお手ごろな価格で常備している「ボウモア」。それ以外は本を読んだり、酒屋の棚の前でコメントを読んだりして買ってきている。
 シングルモルトは、飲むのは勿論だが、銘柄を選ぶのも楽しいのだ。


 ラム酒

 一時期、ラム酒に凝っていた時がある。
 ラム酒が好きだと言うと、料理用のラムを思い浮かべる人が多いようで、そんな酒を飲むのか… などと言われた事もあるが、ラムはカリブ海産を中心に色々な種類があるし、何年も寝かせて熟成させたものは、コクもあり、香りも深く、下手なウィスキーよりよっぽど美味しいと思う。
 まあシングルモルトと同じで、カクテル用のラムしか扱っていないお店も多いので、美味しいラムと言ってもイメージが湧かないのかもしれない。

 ラムの種類は、大きく無色透明な「ホワイト(ライト)ラム」と、淡い色合いの「ゴールドラム」、そして茶褐色の「ダークラム」に分けられるが、私が好きなのはコクのある「ダークラム」である。
 ストレートやロックで飲むのも良いが、夏の暑い日などは、コーラで割って飲むこともある。
 値段も比較的手頃だし、炭酸飲料などと混ぜれば簡単なカクテルとしても楽しめる。
 これで美味しいのだから文句は無い。もっと大勢の人が楽しめば良いのだが…
 夏の日差しが似合う酒だと思う。

料理雑誌「DANCYU」にラムやラムのカクテルをメインにしたバーが紹介されていた。
 それを見ていたら無性にラム酒が飲みたくなった。

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