石と水と地球
コントラバス 杉 森 博 和  

 砂糖や塩が水に溶けるように、大地をつくっている石も水と触れることで少しずつ溶けていく。
 目に見えるような速さではないけれど、ここそこにある石は何万年、何十万年か先には溶けてなくなっているかもしれない。そんな石が溶けていく様を追ってもう、早5年。ときには溶ける速度のあまりの遅さをじれったく感じたり、時にはわずかについた水が石を溶かしてしまわないようにあわてて乾かしたり。
 石は、溶けていくそのときその時、身の回りの情報を自らに刻み込んでいく。暑い熱帯の石と、寒いツンドラの石では、その溶け方はまるで違う。もともと同じだった石が、赤い色になったり、白くなったり。石が溶けてできた土の色を見れば、私たちも容易にその違いに気づくことができる。
 気温だけじゃない、多くの情報を石は持っている。
 ヒトが地球上に現れるよりももっと昔、恐竜さえもいなかった頃。地球の表面 で何があったのであろうか? 石はやっぱり溶けていた。溶け残った石は地殻の変動で地下深くにもぐって眠りにつき、今また地上に出てきている。彼らの持つ情報、ずっとずっと昔、地上はどんな環境だったのだろうか、その疑問に答えてくれる石は、今この時代を後世に伝えるため、今日も溶け続けている。


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